南留別志232
荻生徂徠著『南留別志』232
一 まみ穴といふ所は、古(いにしえ)金ほりたる穴なり。まみはまぶの事なり。享保六年の比(ころ)、黄金のやうなる砂いでたれども、いまだ年のたらぬ金なりとて、ほらずなりぬ。
[語釈]
●まみ穴 江戸の古い地名に狸穴(まみあな)というのがあり、これは麻布狸穴町として現存する。由来は諸説あるが、この地に生息していた猯(まみ=アナグマ)に因んで『まみあな』という地名がついたのが、後に狸の字と混同して狸穴(まみあな)と書かれるようになったとする説が有力。
●まぶ 本物。ここでは純金のこと。純金の出た穴。
[解説]「まみあな」という地名について、徂徠の見解を述べた段。生き物が棲息していた穴ではなく、金を掘った穴の意味であるとする。
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