斉諧俗談124
斉諧俗談 124
〇耳梨池[みみなしのいけ]
大和の国耳梨(耳成)山の麓に、耳梨の池というのがある。伝承に言う、昔、一人の女がいた。名を鬘児[かつらご]という。三人の男が彼女を慕っていた。女は深く嘆いて言った、「女の身は露のようにはかなく、消えやすいものです。とても三人のお気持ちに添うことはかないません」女はそう言うと、耳梨の池に身を投げて死んでしまった。三人の男たちは哀情に耐えず、それぞれ歌を詠んだという。
耳なしの池し恨しわぎも子が来つゝかゝれば水は涸(かれ)なん
足引の山かつらの子けふ行(ゆく)と我に告せばかゑりこましを
足引の山かつらの子けふの事いつしか隈[くま]を見つゝ来にけん
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