政談376

【荻生徂徠『政談』】376

(承前) 異国の律における裁きと同じく、日本でも律が行われた時分は、敵討ちを認めなかった。その理由は、人を殺した者は公儀がその者を殺すことから、敵討ちの必要がない。罪の有無を糾明して赦免された人は公儀が赦したことになり、その人を討つのは通常の殺人となり、その人は敵討ちのつもりでも却って死罪となるのである。

 このように公法を定めることにより、五倫の道を無視して私的に人を殺すことを強く禁じ、郡県制はこのように治めた。今は世がおのずから封建制となっていることから、国々は公儀に構わず諸大名が治めている。五倫の道を大切にして実践しなければ治めることはとても叶わないのだから、郡県制時代の法律は現在には不向きであることを理解すべき。

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