佛像圖彙489

【489】抜除罪垢善神(ばつじょざいくぜんしん) 


[通釈]

抜除罪垢善神 


[解説] 

 『大般若経』を守護する「般若十六善神」の中の一尊。鉾(ほこ)を持つ。五叉棒を持つものもあるという。 

 以上が般若十六善神。説明文のないものが多く、本書の作者がいかに困り果てたかが知れようというもの。 

 後白河法皇が集めたとされる今様集の『梁塵秘抄』の51番は般若十六善神のことが詠まれている。


   般若十六善神は、十六会(え)をこそ守るなれ、もとより無漏(むろ)の法門は、中道にこそ通(かよ)ふなれ 


  本書は平安末期の流行歌を採録したものといわれ、般若十六善神が当時すでに広く親しまれ慕われていたことがわかる。像として造られたものがあったかどうか、もしあったとしても多くの人が拝観できる時代ではないから、あくまで口伝(くちづて)にその存在を知り、観念的に受け入れたものと思われるが、如来や菩薩とともに善神をも信仰の対象としたことは注目すべきことだろう。 

 かくも般若十六善神が受け入れられたのは、『大般若波羅蜜多経』が盛んに唱えられ親しまれたという背景があるからであり、このことは『梁塵秘抄』に般若経に関する歌がいくつも見えることでもわかる。 

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