佛像圖彙378 付・浄土双六
【378】猝(すい)
[通釈]
二十 猝 雄(おす)のほう。
[解説]
猝の字は突然、すばやいといった動作や現象を表わす字。三十六禽の中にこの字はなく、摩訶止観では獐(のろ)となっている。獐はシカ科の哺乳類。体高約60~90センチ。雄の角は約20センチあり先が三つに分かれる。夏毛は赤茶色で、冬毛は灰褐色。中国や朝鮮半島の草原に生息する。絵は江戸時代の邦人によるもので現物は知らないから想像で描いたものであろう。この絵にはツノがない。
[浄土双六]33 諸仏護念(しょぶつごねん)
正しくは六方諸仏護念。東・南・西・北・上・下の六方の諸仏が念仏の行者を護り、離れないこと。念仏者が得る現世利益の一つで、法然が『選択集』一五「六法諸仏護念篇」において述べています。それによると、念仏の行者を護念するのは「六方の如来に限らず、弥陀、観音等、また来って護念したまう」のであり、念仏者は諸仏・諸菩薩の護念を得ることができるとしています。念仏を唱えることで仏の加護があるということで、この絵も浄土教の教えにもとづいたものですね。
絵は農作業に精を出す農夫と、食事を持ってきた妻と子ども。それに近づこうとする悪鬼が仏の光により退散しているところ。信心深く念仏を唱えていれば、いかなる天魔波旬(人の命や善根を絶つ悪魔。他化自在天(第六天)の魔王のこと)も近づくことはできぬというわけです。
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