佛像圖彙106

【106】魚濫観音(ぎょらんかんおん)


[通釈]

魚濫観音(正しくは魚籃)

或遇悪羅刹


[注]

或遇悪羅刹 これも普門品偈の「或遇惡羅刹 毒龍諸鬼難 念彼觀音力 時悉不敢害」(あくぐーあくらーせつ どくりゅーしょーきーなん ねんぴーかんのんりき じーしつぷーかんがい)(或は悪羅刹と 毒龍の諸の鬼等に遇わんに 彼の観音の力を念ずれば 時に悉く敢えて害せず)に基づく。唐代に出現したといわれる観音。手に魚を入れた籠を持つ。西遊記の通天河の段でも現れる。東京都港区の魚籃寺(ぎょらんじ)は魚籃觀音を本尊とする数少ない寺。水産業関係者の信仰を集める。此の図は魚の上に立つが多くは手に魚籃を下げる。余説。筒井康隆の作品に「魚籃観音記」という罰当りだが抱腹絶倒のポルノ作品がある。(以上、冢堀庵識)


[解説]

 魚籃観音は、魚を入れたかごを手にさげている観音。大魚に乗っている像もある。羅刹(らせつ)・毒龍の害を除く功徳があるという。羅刹は、インド民間信仰の悪鬼。人をたぶらかし、血肉を食うという。男は醜悪で、女はきわめて美麗。後に仏教の守護神となった。また、地獄の獄卒のこともいう。


[雑記]

 東京に魚籃寺があり、地名にもなっています。


『江戸名所図会』より 魚籃 観音堂



都内にある魚籃寺。正しくは三田山水月院魚籃寺。浄土宗。江戸三十三箇所観音霊場の第25番札所。元和3年(1617年)頃に豊前国中津にある円応寺に称誉が建立した塔頭である魚籃院が前身。この寺の創建は承応元年(1652年)に称誉が現在の地に観音堂を建て、本尊をここに移したことに始まる。ご本尊は「魚籃観世音菩薩」(空海作と口碑に残る。頭髪を唐様の髷に結った乙女の姿をした観音像)。秘仏で、五月の第二土曜日の「大施餓鬼法要会」の時のみ開帳。お前立もあるようです。

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