南留別志207

荻生徂徠著『南留別志』207

一 天(あま)のかぐ山は、山の名にあらず。山の高くて、空のかく(隠)るゝをいふなるべし。


[語釈]

●天のかぐ山 天香具山(あまのかぐやま、あめのかぐやま)、または香久山、香具山(かぐやま)。奈良県橿原市にある山。畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)とともに大和三山と呼ばれる。もとは多武峰から続く山裾の部分にあたり、その後の浸食作用で失われなかった残りの部分が現在の形になったと考えられている。山というより丘のような状態。古代より畝傍山とともに神事にもちいる陶土の採集場所とされている。徂徠はこの名について、この山が太古の昔にはとても高く、頂上が空の中に隠れてしまうほどだったというところからこの名がついたのだろうとする。

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