ある社中の刊行物

ある社中の刊行物

東隅書生

序文は毛筆版下である。明治十七年と見え、近代本だが、形態は近世的である。ある社中の刊行物であるらしい。


社中の名は「円熟社」といったものらしい。相当な疲れ本。

冒頭の一〇人ほど掲載したが、こんな具合で続くのである。

摺りは木版でまったく近世的な体裁で仕立てられた本なのだが、唯一奥付の部分が活字で組まれて摺られているもの。そこだけが何か異質に思われるが、近代本と思えば不思議ではない。明らかに金属活字で組まれた印刷である。同盟人に限った販売で、定価三〇銭。玉句寄想人は窪村吉重、出版人は藤森英十郎と見える。発起と成功の語もあまり見ないように思う。もとより俳諧本は集めないので他の事例を知らぬだけかもしれない。管見なのだ。住所も江戸とは違い、地方の出版ということである。序文が十七年であったことを思うと、十五年発起してほぼ三年かけて出版を実現したという理解でよかろうか。掲載の百名ほどは必ず購入したことだろう。


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