『福禄千字文』
『福寿千字文』
東隅書生
この『福寿千字文』も何度か紹介している。つまり何冊か獲得し、その度に報告している。巻頭に福禄寿の雑体篆書を並べているので、雑体の篆書資料としてある程度世の中に売り広められた影響を持つ『千字文』という位置づけである。享保年間の上梓であり、江戸時代人の新しいモノ好きの嗜好が書体にも及び、篆書という当時の知識では最古の書体に飛びついた。さらに雑体の篆書にも興味が広がり、それに関わる出版も見え出す中での『千字文』であったと考えられる。今日的には筋の悪い書体なのだが、嗜好はそこには拘らない。面白いとなれば飛びつくのである。需要があっての出版だ。
『東隅随筆』573号より著者の許諾を得て転載
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