斉諧俗談113

斉諧俗談 113

〇白狐尾[びゃっこのお]

古今著聞集に言う、知足院殿[ちそくいんどの]はある望みがあり、大権坊[たいごんぼう]に命じて成就するよう祈願させた。二七日目に至り、知足院殿が昼寝をされている時、どこからともなく一人の美女が来て枕元に立った。その髪の長いことといったら、着物の裾より三尺もあり、まるで天女のようであった。知足院殿はその髪つかんで引っ張られたところ、彼女は逃げようとしてその髪を切った、という夢を見、目が覚めてみると、狐の尾があった。そこでこの事を行者に話されると、行者は「明日の午(うま)の刻に願いが成就されることでしょう」と答えた。果たして、嬉しい知らせが届いたという。


[語釈]

知足院殿 太政大臣藤原忠実。平安時代後期から末期にかけての公卿。藤原北家、関白・藤原師通の長男。保元の乱に際して次男頼長が朝廷に反したため,忠実も知足院に籠居し,ここから知足院関白の称がおこった。

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