筆意彫りによる筆跡の再現

筆意彫りによる筆跡の再現

東隅書生  


封面は三分割形式。中央は隷書で書名。右は上梓年、左は蔵版元。筆意彫りの序がつづく。序文には引首印が認められる。

 この序文には撰文者と揮毫者が別人でそれぞれの名が見える。その署名の後には落款印として印が捺されていたものをそのまま版にして摺っている訳である。

 この原稿が毛筆で行われ、その筆跡を再現するように版刻されたことは見れば知れるのである。そのように作る価値を認めていたから筆意彫りして筆跡の再現を行っている。当時の価値観をその点に感じるのである。印のまた捺されたままのものを再現したのだと考えられる。幕末の篆刻の理解も版刻職人によく行き渡って篆書もありのままに再現されているのだろうと思わせる。江戸時代初期の版本に使われた篆書は、ここまで上手くは彫れていなかったように思われる。(『東隅随筆』565号より著者の了解を得て転載)

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