斉諧俗談23

斉諧俗談 23

〇高月輪[たかつきわ]

信濃の国に小田井[おだい]という広い野がある。この野の中に芝草が生えているが、その中に輪のような丸い所があり、そこには雪も積もらず霜も降らない。その輪の太さは一尺ばかりで、直径は一町ほどある。土地の人たちはこれを高月輪[たかつきわ]と呼んでいる。言い伝えによると、この野の向こうに山があり、小幡山[こはたやま]という。その峰に権現の社があり、その神が毎夜馬に乗ってここに遊びに来られ、時々轡(くつわ)の音が聞こえるということだ。


[語釈]

小田井 現在の長野県北佐久郡御代田町中心部にあたる。中山道六十九次のうち江戸から数えて二十一番目の宿場。参勤交代などで大名が北国街道との分岐点でもあった追分宿で宿をとる際、小田井宿は姫君や側女たちの宿にあてられることが多く「姫の宿」とも呼ばれた。


 木曾街道六拾九次 小田井(歌川広重画)

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