斉諧俗談3
斉諧俗談 3
〇袋星[ほほらぼし]
或る書にいう、「孝霊天皇の三十六年正月、倭迹日襲姫[やまとひそひめ]は夫がいないのに懐妊され、怪しい稚児をお産みなされた。しかしその胞袋[えな]は破れず、玉のようであった。その中に男児があり、透けて見えていた。胞袋を破ろうとしたが破ることができない。その夜、胞袋は天に昇り星になった。今、銀河[あまのがわ]にある袋星[ほほらぼし]がこれである」と。
按ずるに、袋星とは、どの星のことかはわからない。思うに、天津[てんしん]、天籥[てんやく]の類であろうか。
[語釈]●天津 天津甕星(あまつみかぼし)。日本神話に登場する星の神。別名、天香香背男(あめのかがせお)、星神香香背男(ほしのかがせお)、香香背男(かがせお)。『古事記』には登場せず、『日本書紀』の葦原中国平定にのみ登場する。平田篤胤は、神名の「ミカ」を「厳(いか)」の意であるとし、天津甕星は金星のことであるとしている。日本神話では星神は服従させるべき神、「まつろわぬ神」として描かれている。全国の星神社や星宮神社の多くは天津甕星を祭神としている。 ●天籥 天龠。これは中国古代の星官名で、日本の古い書物には見えない。江戸時代になると大量の書物や情報が伝播、流入されることから、その知識がある人は著述に採り入れたり話が及んだりしている。いて座とへびつかい座の間にある銀河系内の星という。
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