今の我が国の空気を表わしたような古詩

今の我が国の空気を表わしたような古詩

中国最古の詩集として『詩経』があります。これは儒家のテキストとして重んじられたものですが、その冒頭の国風(諸侯の封ぜられた各国の歌)のひとつに邶風(はいふう)があります。これは衛の国の歌で、なぜか衛については3つに分けられていますが、細かなことは省くとして、この中に「北風」という詩(歌)があります。この詩はまるで言い知れぬ不穏な空気が漂う今の我が国のことを歌ったようであり、海音寺潮五郎氏の訳(これも詩になっています)がとてもわかりやすいので、ここに紹介することにしました。

各末尾の「シイシ」は語調を整える「只且」をそのまま表したもので、はやし言葉のようなものと思われます。


  北 風

北風其涼、雨雪其雱。 惠而好我、攜手同行。 其虛其邪、既亟只且。

北風其喈、雨雪其霏。 惠而好我、攜手同歸。 其虛其邪、既亟只且。

莫赤匪狐、莫黑匪烏。 惠而好我、攜手同車。 其虛其邪、既亟只且。


  逃 散

北風寒く

雪ほうほう

政治(しおき)のつらさよ

しんぼがならぬ

わしが好きなら

連れて行っておくれ

ぐずぐずしてては

間に合わぬ

国のほろぶは

目の前じゃ シイシ


北風ひゅうひゅう

雪こんこ

何とおかみの

むごいこと

わしが好きなら

連れて行っておくれ

のんきにしてては

間に合わぬ

ほろぶるきざしは

揃うてる シイシ


国じゅうで

羽ぶりのよいは

狐とからす

くすんでうだつの上らぬは

心ただしい人ばかり

こんな国には

がまんがならぬ

わしに心があるならば

同じ車で逃げとくれ

のんべんだらりとしておれぬ

凶(わる)いしるしが

皆そろた シイシ



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