政談428

【荻生徂徠『政談』】428

(承前) また、村から夫役として人夫あるいはその代わりの銭を田地の石高(こくだか)で決めるのは無理というもの。田地からは年貢を納めるのだから、これ以上の負担はできない。そもそも二重課税は非道である。百姓の仲間同士で年貢を船積み場まで運搬する際、百姓自身に運ばせることから、年貢米の量に応じて人夫を頼むということをしているが、これに田地の総石高に応じて人夫を充当することから、公儀も人夫を当てるのに村方での取り決めを採用しているが、これが無理というもの。


[解説]年貢は幕府にとって確実に徴収したいことから、その地方で集めた年貢米を船積み場まで運ぶにあたり、人夫の雇い賃を五里以内は百姓負担とし、それ以上は幕府から駄賃給付の形で負担した。農民が納める税は年貢のみだが、その他に道路や橋の補修など、作業に人夫として村から出すことが決められていた。農繁期は無理なので多くは農閑期だが、農閑期だからヒマということはなく、それ以前に初春から晩秋まで苛酷な農作業を続けてきた農民にとって、冬はわずかな遊びの時間。その時期に夫役をさせるのは酷であり、代わりに銭を納めればよいとなっても、とてもそんな余裕はない。このため、徂徠は所有する田地から年貢を取りながら、さらにその石高に応じて夫役の負担をさせるのは二重課税であると厳しく批判している。

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