封面について[3]
封面について[3]
『世話千字文』の封面を掲げた。中央は最大の文字で書名を掲げている。右に揮毫者の名。巻菱湖(まき りょうこ、安永6年(1777年) - 天保14年4月7日(1843年5月6日))、江戸時代後期の書家。越後国巻(現在の新潟市西蒲区)に生まれる。姓は池田、後に巻を名襲名。名は大任、字は致遠または起巌、菱湖は号で、別号に弘斎)の実子巻鴎洲(まき おうしゅう)。
左に本屋の名「錦耕堂」が見える。書体は皆同じと見てよいだろう。すぐに本文が始まる。書の手本なので文字は大きめだが、それでも封面中央の書名の文字よりは小さく作っているのだ。
この封面の筆耕が誰かは知れない。しかし、文字の大きさにせよ、使用の書体についても意識せずに版下が書かれるはずはない。書名と左右の揮毫者、本屋名が同じ書体であれば書体ヒエラルキーを覆すことにはならない。中央の書名は左右に対して優位に作られると考えた時、使った書体は同等であっても文字の大きさの上で優位に作られていると見えるのである。つまりは、封面三分割の類型に沿った作りをしていると断じてよい和刻本の一例であると見てよいだろう。 つづく(東隅書生識・図版提供)
0コメント