政談414
【荻生徂徠『政談』】414
●出家の公事に三衣を着けさすまじき事
出家の僧侶が公事(くじ)に出廷する際には、三衣を着用しないのが古の律の定めである。公事は元来仏が裁き罰するもので、奉行所に出頭して俗人の裁きを受け、法によって処罰される以上は、三衣は着用しないのである。出家に対して流罪や死罪、徒罪を言い渡す時は、度牒(どちょう)を取り上げて還俗(げんぞく)させてから行う。これは、出家には徒罪・死罪の法がないために還俗させるので、還俗させるには度牒の取り上げが必要だからである。
[語釈]●三衣 さんえ。「さんね」とも。僧が着る三種の袈裟(けさ)。僧伽梨(そうぎゃり)(大衣(だいえ)・九条。王宮等で着用)・鬱多羅僧(うったらそう)(上衣・七条衣。聴講・礼仏用)・安陀会(あんだえ)(中衣・五条衣。院内の作務・旅行など用)。また、一般に法衣(ほうえ)のこと。 ●度牒 国家公認の得度に際して、国家機関によって新たに得度した僧尼に交付される身分証のこと。出家得度の証明書。
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