政談386

【荻生徂徠『政談』】386

(承前) これは昔、主人の家が潰れたあとにその家来が屋敷に住むことがあったため、ただちに屋敷を引払うことが公儀を敬う態度であるとして、潰れた主人の親類らに命じて引払わせたことが慣習のようになり、今では法のようになって、公儀から命じるようになった。しかし、昔は諸大名の江戸屋敷はいずれも当座の旅宿のようなものと常に心得ていて、陣小屋のようなものであったことから今も大名屋敷の長屋を小屋と言い慣わしているが、今は江戸常住の家来が多くなり、小屋が常住の家のようになっている。大名の妻女に対しても、昔は殊の外大切に扱ったものだが、今はそのようなことはない。今、公儀がその家中に憎しみがないのであれば、引渡しについてはもう少し緩やかにしてもよいのではないか。

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。