政談348
【荻生徂徠『政談』】348
(承前) 総じて罪なくして潰れた大名がある場合、その家中の百石以上の侍については、たとえ数千石の人であろうと地元で五十石ずつ下賜し、引き続きその国にとどまらせて郷士にすべき。されば、十万石の家が潰れて公儀へ十万石返上すべきところ、八万石だけ召し上げ、残りの二万石は郷士たちへの支給分となる。五十石を不足として他所へ立ち去る者がいれば自由にさせる。諸士の流浪を不憫に思われてこのようなことをなされれば、それは大いなる御仁徳である。さすれば大名の家が潰れようとも流浪する者もなく、国の治安にも良いことだろう。その大名の城が幕府の管理する所となり、小身者を責任者として派遣するにあたっては、万人は右に述べた郷士で間に合うはずである。また、その城を別の大名に下さる時も、郷士を城附きとしてあてがい、気に入って取り立てようとも、罪を犯したとして処罰しようとも、元々の家中と変わりなく随意にせよと規定されたい。以上のようにすれば、大名の家中の諸士は永く主人の悪逆に与することはなく、子々孫々まで謀叛に与する気づかいはあるまい。
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