政談271
【荻生徂徠『政談』】271
(承前) 総じて剣術・馬術の戦いの上でも、全体にはまる所に思わぬ作用が働き、敵の打つ太刀の下へ入り、自分が真っ二つにされるべき所に敵に勝つといったのもこれである。私は幼少より文章を好んで書くが、昔書いた文章をあとになって見れば、「さても我ながらよくぞ書いたものだ。どうすればこのように書けることだろう」と思う文章がある。これは、総体その事にうまくはまっている時とそうでない時は違うからである。人の才智はいつも同じだが、その事に対してうまくはまらない時は、その人の才智がうまく働かないため、十分に力が発揮できないのである。よくその事にはまれば、才智もいかんなく発揮される。この妙所は技を体得していない人には分からない。
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