政談268
【荻生徂徠『政談』】268
(承前) 総じて上の人には得意なことがあっても、それをひけらかすのを嫌うようにしたい。なぜならば、得意なことがあっても、強いてそれを自慢することはなくとも、人情としては心の中では自慢したいと思うもの。そのため、自慢したいことと違う意見があると、どうしてもそれを聞き入れないでおこうという意識が働く。だから、上の人は「他の技なし」という状態がよいのである。聖賢の書はその及ぼす所が広大にして、どれもこれも究極的には一つの所に向かている。されば、人を使う道を会得して、下の人の才智を出やすくするようにすることが、老中・番頭以上の務めであることは明らかである。
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