政談242

【荻生徂徠『政談』】242

(承前) 綱吉公の御代に召し抱えられた能役者らを解雇するように言う人もあるが、下賤な人は上の人よりも才智がある。ただ、使い方が悪いためにその才智が諂いとなってしまう。良い使い方をすれば、器量の良い人も必ずいるはず。しかも、この人たちは上の思召しで採用されたのだから、当人に罪はない。下賤な人で、御家人の株を金で買って武士になるのとは全く違う。一度旗本にしたからには、正規の旗本と同じ待遇をすべきである。ところが、元来の家筋が悪い者だからといって粗略に扱えば上の御威光は立たず、はなはだよろしくない。たとえ百姓・町人でも、才智ある者を今、御家人として召し抱えたとしても、これこそ上の御威光であり、国家を治める道になんの憚ることがあろうか。とかく家筋を重視するのと賢才を挙用するのは表裏一体であり、国家治乱の分かれ道もここにある。


過去の出来事

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