政談237
【荻生徂徠『政談』】237
(承前) このように人情は古も今も変わらないものであることから、聖人の道を行うには賢才を下の者から挙用することを第一とし、世官といって、重い役職を特定の家筋で世襲することを深く戒めたものである。もっとも、人情としては見慣れたことに安心するものでもあることから、人々が畏敬する人を高位に就ければ、下のことがよくわかっているとして人々はその人の下知をよく聞くことから、『孟子』にも、「身分が低い者を抜擢して高い者を踰(こ)えさせ、上とは元来疎遠な人を大切にして、以前から親しい人よりも目をかけることを軽率にすべきではない」と言っているが、これは人情を破らぬよう通り一遍の事を言ったまでで、実際には右に述べたように下から賢才を挙用すべきである。
[語釈]●『孟子』 梁恵王下にあり。
[解説]重ねて高位高官の世襲を批判している。どのような仕組みや制度も人情がからんで妨げとなるが、それに拘泥していてはどんな制度も結局は骨抜きとなり、有名無実となる。この点、徂徠は徹底しており、孟子の論よりも強硬である。
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