政談171

【荻生徂徠『政談』】171

(承前) 鋳造した銭を運搬するのは大変であるから、諸大名の各城下でも自由に銭を鋳造させるようにした方がよい。異国でも銭は地方で鋳造し、国名を裏面に刻印している。また、湯殿山や浅間山の麓で紙銭を販売させ、これを水中や火口に投げ入れさせるようにすべき。そうすれば管理する別当のためになるし、世間のお宝たる銭も消失せずに済む。昔から僧には金銀米銭を供し、仏神には紙銭を用いるのが古法である。これは、仏神には用無きものではあるが、こちらの誠を表すためである。今は天台宗の儀式で紙銭が使われている。また、死者の棺桶に入れるのも紙銭である。中国の聖人が定めた習慣でも、明器(めいき)といって実用ではない陶器の器を副葬品として棺桶の中へ入れており、異国ではみなこのようにしている。このようにすれば、銭の減少は少なくなる。


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