佛像圖彙397

【397】毘沙門天(びしゃもんてん) 


[通釈] 

毘沙門天 梵字はベイ 

沙門を毘(たす)けるというのは、欲鉤を引いて佛道に入らしむるの意味である。 

沙門を毘けるというのは、破戒の僧を守護すべきことをいい、その誓約をする意味である。 


[注] 

欲鉤 佛道を妨げる様々な欲望のこと。維摩經に「先以欲鉤牽、後令入佛智」とある。 


[解説] 

 毘沙門天は四天王・十二天の一つ。須彌山(しゅみせん)の中腹にあって北方を守護し、多くの夜叉(やしゃ)・羅刹(らせつ)を統率するとともに、仏法を守護し、福徳を授ける善神。その形像は怒りの相を表わし、甲冑を着け、片手に宝塔、片手に宝棒また戟を持つ。 日本では四天王の一尊として造像安置する場合は「多聞天」、独尊像として造像安置する場合は「毘沙門天」と呼ぶのが通例。庶民における毘沙門信仰の発祥は平安時代の鞍馬寺とされる。福の神としての毘沙門天は中世を通じて恵比寿・大黒天に並ぶ人気を誇るようになる。室町時代末期には日本独自の信仰として七福神の一尊とされ、江戸時代以降は特に勝負事に利益ありとして崇められる。 

 本書では「毘沙門」を丁寧に「沙門を毘(たす)ける」と説明しているが、多くの解説・辞書類ではここまで説明したものはなく、「毘沙門天」という固有名詞のままであり、沙門を助ける神という説明も見当たらない。多くは武神としている。    

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