佛像圖彙288


【288】鬼子母神(きしぼじん) 


 [通釈] 

鬼子母神 梵字はウン 

顕正論にいう「円満具足の薬又・鬼子母天である」と。鬼子母は名義に説明がある。 光明にいう「訶梨帝は吉祥果を持つ」と。一義にいう「婉子は名で、悲願九と号す」と。 

[注] 

顯正論 複数あるので何を指すかは未勘。すべて法華宗の僧の著作。 

円満具足 十分に満ち足りて備わっていること。少しも不足のないこと。 

薬又 『蘇婆呼童子請問経』に、地上における魔鬼として、天、龍、阿修羅、成就者などとともに薬又を挙げている。 

名義 類聚名義抄

吉祥菓 きちじょうか。吉祥天の母である鬼子母神が手に持つ果実で、柘榴(ざくろ)のこと。 


[解説] 

 鬼子母神は、女神の名。「きしもじん」とも。『鬼子母経』によれば、千人の子があり、五百は天上、五百は世間にあり、最小の子を愛奴(経によって嬪伽羅という)と名づけ憐愛した。鬼子母は性質邪悪で、常に他人の子どもを殺して食べたため、仏はこれを教化しようと愛奴を隠した。鬼子母は必死に探したが探し求めることができずに悲嘆にくれた。仏は、「汝は千人中ただ一子を失うにさえ悲嘆懊悩するのに、汝に子を食われた親達の胸中はいかばかりか」と説いて子を返した。それ以後、鬼子母は仏に帰依し、誓願を立て、産生と保育の神(あるいは盗難除けの守護)となった。手に吉祥果(ざくろ)を持つ天女の姿をとる。日蓮宗で特に信仰している。 

 「鬼」の字の上の「ノ」を取った字を使用している寺院もある。    

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