佛像圖彙169

【169】火焔明王(かえんみょうおう)


[通釈]

火焰明王 梵字はカンマン

火光三昧に入り貪瞋痴の三毒を滅ぼされる。


[注]

火光三昧 自ら火を発して煩悩を焼き払うこと。釈迦の弟子阿難陀(あーなんだ)が百二十歳にて入寂する時自らの遺骨が争奪戦になる事を恐れ恒河上の船の上で自ら火を発した事に依る。本行集經等に見え、法華經には火定三昧と薬王菩薩の故事を引く。

不動明王は常に火焰を背負っているが、立像の場合に「火焰明王」と呼ぶ事が有る。(旧知の眞言僧・故人の教示に據る)〔冢堀庵〕

余説、此の種子(梵字)も形が少しおかしい。


[解説]

 注にもあるように、これは「不動明王」のことで、立像であることから特に「火焔明王」という見出しをつけたのだろう。本書には「不動明王」という見出しの尊像はない。不動明王は密教特有の尊格である明王の一尊。大日如来の化身とも。五大明王の中心となる明王。真言宗をはじめ、天台宗、禅宗、日蓮宗等の日本仏教の諸派および修験道で幅広く信仰されている。大日如来、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王、金剛愛染明王らと共に祀られる。

真言

不動明王の真言には以下のようなものがある。 一般には、不動真言の名で知られる、小咒(しょうしゅ)、一字咒(いちじしゅ)とも呼ばれる真言が用いられる。

ノウマク サンマンダ バザラダン カン

(namaḥ samantavajrānāṃ hāṃ)

(すべての諸金剛に礼拝する。ハーン。)

火界咒(かかいしゅ)長真言

ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン

(namaḥ sarvatathāgatebhyaḥ sarvamukhebhyaḥ sarvathā traṭ caṇḍamahāroṣaṇa khaṃ khāhi khāhi sarvavighanaṃ hūṃ traṭ hāṃ māṃ)

慈救咒 (じくじゅ)中真言

ノウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン

(namaḥ samantavajrānāṃ caṇḍa-mahāroṣaṇa sphoṭaya hūṃ traṭ hāṃ māṃ)

(すべての諸金剛に礼拝する。怒れる憤怒尊よ、砕破せよ。フーン、トラット、ハーン、マーン。)

 画像は国宝・醍醐寺蔵絹本著色五大尊像の内、不動明王。


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