佛像圖彙135
【135】金剛悲地蔵(こんごうひじぞう)
[通釈]
金剛悲地蔵 梵字はラ
左手に錫杖を持ち、右は引接(いんじょう)の印を結ぶ。
畜生道の衆生を済度する。
[注]
引接 引摂とも。仏・菩薩 が衆生をその手に救い取り、悟りに導くこと。また、人の臨終のとき、阿弥陀仏が来迎 (らいごう) して極楽浄土に導くこと。
[解説]
金剛悲地蔵は、畜生道に堕ちた衆生を済度する地蔵。畜生とは一般に動物を蔑んだ言い方で使われるが、地獄における畜生道は道徳上、許すことのできない色情にふけった者らを指す。その行為が禽獣同様あるいはそれにも劣るということ。欲情もまた生きている者にとっては逃れることができない煩悩であり、本能である。それを完全に脱却するのは不可能といってもよい。だから、それを全否定するのではなく、あくまで人倫に悖る行為をした者が対象ということになる。
[雑記]
本書の各見出しには梵字が添えられています。梵字は各仏や菩薩を表わしており、とても尊いものとされています。墓石の後ろに添えられる卒塔婆。これは地水火風空の五輪塔をかたどったものだそうですが、守り本尊を表わす梵字が最上部に書かれています。図は一例で、これも宗派や地域の習俗によりいろいろあるようですが、梵字を最上部に書くのは同じであり鉄則です。
梵字も書き順があり、複雑なものが多いですが、これは出家者にしか許されず、書き方は口伝のために俗人が見よう見まねで書こうとしてもうまく書けるものではありません。卒塔婆のある墓は堂々とした構えのものが多く、近年は資金的にそういう墓を建立、維持できる人も限られてきたため、卒塔婆を目にすることも少なくなりました。
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