仏像図彙94

【94】如意輪観音


[通釈]

如意輪観音 梵字はキリーク(正しくはキク)

如意輪の立てた誓願にいう「私が立てた大悲の誓願の中に、一人も二世の願いをかなえぬという事はない。私に隨えば虚妄罪過の中であろうとも悟りに至らぬ事はない。(なぜならば私の)大悲は本覚を拾う事にあるからである」と。如意輪は天道の化主であり、如意珠は天上の勝れた宝である。○大梵深遠観音ともいう。


[注]

本誓 ほんぜい。菩薩の立てた衆生済度の誓い。

不還 ふげん。悟りに至った者。

余説。民間信仰では歯痛を治す神として祀られる事がある。武州狭山北入曽(きたいりそ。埼玉県)では路傍の石像に箸を供えて祈願する風習があったとは先考の談。今も有るかは不明。古川柳にも「如意輪は歯の痛む様に見へ」と。(以上、冢堀庵識)


[解説]

 如意輪観音は、日本では「如意輪観音菩薩」「如意輪観世音菩薩」「大梵深遠観音」などさまざまな呼び方があるが、重要文化財等の指定名称は「如意輪観音」となっている。また「救世(ぐぜ)観音」とも呼ばれる。

 如意とは如意宝珠(チンターマニ)、輪とは法輪(チャクラ)の略で、如意宝珠の三昧(定)に住して意のままに説法し、六道の衆生の苦を抜き、世間・出世間の利益を与えることを本意とする。如意宝珠とは全ての願いを叶えるものであり、法輪は元来古代インドの武器であったチャクラムが転じて、煩悩を破壊する仏法の象徴となった。六観音の役割では天上界を摂化するという。

 真言は、

 オン・バラダハンドメイ・ウン

 オン・ハドマ・シンダマニ・ジバラ・ウン

 画像は、如意輪観音坐像 滋賀・園城寺観音堂


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