佛像圖彙91

【91】馬頭観音(ばとうかんおん)


[通釈]

馬頭観音

この菩薩は、応用利益の甚だ深い事は馬が水や草を思って余念が無いのと同じ様だという意味である。


[注]

応用 「おうゆう」と訓ず。仏が救済する人の資質に応じて姿を変えること。

像容は憤怒相が良く知られているが柔和相もある。

代表作は筑紫観世音寺の巨像。

民間信仰では牛馬等役獣の守護神として路傍の石仏として祀られる。


[解説]

 馬頭観音は、梵名のハヤグリーヴァ「馬の首」の意。これはヒンドゥー教では最高神ヴィシュヌの異名でもある。他にも「馬頭明王」「大持力明王」など様々な呼称がある。衆生の無智・煩悩を排除し、諸悪を毀壊する菩薩。「師子無畏観音」ともいう。

他の観音が女性的で穏やかな表情で表されるのに対し、一般に馬頭観音のみは目尻を吊り上げ、怒髪天を衝き、牙を剥き出した憤怒(ふんぬ)相をしている。このため、密教では「馬頭明王」と呼ばれて仏の五部で蓮華部の教令輪身(きょうりょうりんじん)であり、すべての観音の憤怒身ともされ観音の菩薩部ではなく、憤怒相の守護尊として明王部に分類されることもある。

 真言は、おん あみりと どはんば うんはった そわか。天台宗系は、おん あみりとどはば うん はった。

 国内の流通が活発化し、馬が移動や荷運びの手段として使われることが多くなった江戸時代以降、馬が急死した路傍や芝先(馬捨場)などに馬頭観音が多く祀られ、動物への供養塔としての意味合いが強くなっていった。「馬頭観世音」の文字だけ彫られた石碑は、多くが愛馬への供養として祀られたものという。また、千葉県では馬に跨った馬頭観音像が多く見られる。


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