佛像圖彙73

【73】金蔵菩薩(こんぞうぼさつ)


[通釈]

金蔵菩薩

金とは壊れることがない性体で有り、水に入っても溺れる事が無く、火に入っても色を変える事が無い。

この菩薩は因位称名の功徳に答えて西方の聖衆となり、黄金不壊の徳義を得られた。故に金蔵というといわれている。


[注]

因位 いんに。悟りに至る前の段階。

称名 しょうみょう。仏を心中に念じ、その名を声に出して唱えること。浄土教では、とくに阿弥陀仏の名号を称えること。


[解説]

 金蔵菩薩は、壊れることのない黄金の徳を持つ菩薩。この黄金は金剛と同じ。最も硬い石。叩かれようが打たれようが熱せられようが変わることがない強い意志に譬える。持ち物は箏(そう)。琴と同じようなもの。「金蔵」を寺号とする寺院も多く存する。


[雑記]

『梁塵秘抄』175

極楽浄土は一所(ひとところ)、つとめなければ程遠し、我等が心の愚(おろか)にて、近きを遠しと思うなり

 

 一所は「ひとり」を敬っていう語。おひとり。おひとかた。ここでは阿弥陀如来さまを指します。阿弥陀さまのおわします極楽浄土(浄土は御仏の数だけあり、「極楽」は阿弥陀さまの浄土のこと)は、日々のお勤めをしなければとても遠い所となる。仏心を保たず、放縦に流れて怠惰な心のままでは、本来、とても近くにあるものをわざわざ遠くに追いやってしまう、どうせ勤めに励んだとて、極楽は遠くて自分には無理だ、と諦めてしまう。これはよくないことだ、といった意味。平安、鎌倉期の古語の「勤め」は、ほとんどは勤行を指します。読経・念仏や礼拝(らいはい)などをして仏道修行に励むこと。任務、仕事などの勤め(務め)の意味は中世以降に多くなりますが、基本的に江戸時代までは仏事の意味が多いです。

過去の出来事

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