佛像圖彙62

【62】観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)


[通釈]

二十五菩薩

観世音菩薩 梵字はサ

梵語にはアバロキタウシハラといい、唐では観自在と翻訳する。『文句』にはバロキティゼイとある。『往生要集』にいう「弥陀の正法が滅んで後、(弥陀に代わって)観世音が等正覚を成す。普光功徳山王如来と号す」と。


[注]

文句 書名。正しくは『法華文句』。天台大師智顗の法華経講義を弟子が筆記した物。天台教学では必須の聖典。

往生要集 書名。源信(恵心僧都(えしんそうず)と尊称される)の著。浄土教の観点より、多くの仏教の経典や論書などから、極楽往生に関する重要な文章を集めた仏教書で、1部3巻からなる。死後に極楽往生するには、一心に仏を想い念仏の行をあげる以外に方法はないと説き、浄土教の基礎を創る。また、この書物で説かれた、地獄極楽の観念、厭離穢土欣求浄土の精神は、貴族や庶民らにも普及し、後の文学思想にも大きな影響を与えた。本書が撰述された直後に、北宋台州の居士で周文徳という人物が、本書を持って天台山国清寺に至り、中国の僧俗多数の尊信を受け、会昌の廃仏以来、唐末五代の混乱によって散佚した教法を、中国の地で復活させる機縁となったことが特筆される。

等正覚 とうしょうがく。生死の迷いを去って、一切の真理を正しく平等に悟ること。 仏の悟り。 三藐三菩提(さんみゃくさんぼだい)。 正等正覚。

この像様は来迎(らいごう)の図。弥陀と共に現れる二十五菩薩の筆頭。


[解説]

 菩薩といえば観音さま、と言われるほど古来より特に崇拝されている菩薩。般若心経の冒頭に出て来る観自在菩薩のこと。世間の人々の救いを求める声を聞くとただちに救済する求道者の意。救う相手の姿に応じて千変万化の相となる。 阿弥陀仏の脇侍ともなる。インド土着の女神が仏教に取り入れられたとする説もあるように、観音菩薩は女性の顔つき、容姿が多い。しかし、性別にも色々な説があり、浄土信仰では仏はすべて男性になるとされているように、菩薩もまた男性であるとする説があるほか(起源は男性であったとされる)、性別にこだわらない中性説もある(女性に対しては女性に変身して説法することもあるため、次第に性別は無いものとして捉えられるようになった)。中国では「慈母観音」という言葉から示されるように、女性と見る向きが多い。

中国の観音菩薩像(北宋時代)

過去の出来事

過去の本日の朝廷や江戸幕府の人事一覧、その他の出来事を紹介します。ほかに昔に関する雑記など。