佛像圖彙33

【33】不空成就仏(ふくうじょうじゅぶつ)

[訳]

不空成就仏 梵字はアク

『菩提心論』(ぼだいしんろん)にいう、「北方不空成就仏は、所作智を成就することから、羯磨智(かつまち)と名付けられた」と。


[注解]

『菩提心論』 書名。龍樹の著、不空訳と伝えられている。禅定(ぜんじょう)に依る即身成仏を説く。

所作智は、仏が衆生を導くための四智・五智。


[解説]

 不空成就如来は密教における金剛界五仏の一尊で、金剛界曼荼羅では大日如来の北方(画面では大日如来の向かって右方)に位置する。仏の悟りの境地のうち、唯識思想で言う「成所作智(じょうしょさち)」を具現化したもので、何物にもとらわれず実践する意という。原語の「アモーガ」は「空(むな)しからず」という意味で、この如来が何事も漏らさず成し遂げることを示す。印相は、左手は腹前で衣を掴み、右手は胸の高さに上げて手のひらを前に向けた施無畏印(せむいいん)を結ぶとされるが、本書に描かれた像は衣で手を隠しており、どのような印かは不詳。

不空成就如来は胎蔵界の北方、天鼓雷音如来(てんくらいおんにょらい)と同体であると考えられている。また釈迦如来と同一視されることもある。

真言は「オン・アボキャ・シツデイ・アク」(Oṃ amoghasiddhi aḥ)

日本における不空成就如来の彫像は、五仏(五智如来)の一として造像されたものが大部分であり、不空成就如来単独の造像や信仰はほとんどない。

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