仏像圖彙13
【13】下品中生(げぼんちゅうしょう)
[訳]
下品中生は破戒し僧のものを盗んで自分を飾り立てる者であるが、臨終の時念仏の知識に遇う。(地獄の業)火は風に変じ、諸々の天華は菩薩に化して此の人を引接(いんじょう)して往生を得させる。
[冢堀庵注]
悪人をやに近付いて来ましたね。
[解説]
下品中生は五戒・八戒・具足戒を犯し、僧祇物(そうぎもつ)を偸盗し、不浄の説法をして恥じ入ることのない者。臨終の時に、まさに地獄に堕さんとした時、阿弥陀仏の十力威徳、光明神通、五分法身(ごぶほっしん)を聞いて、80億劫の生死の罪業を滅除し、地獄の火炎が変じて天華となり、観音や勢至の説法を聞き無上道心を起すという。
僧祇物とは、出家の集団に所属する物資一切をいう。寺舎、田園など共有物である四方僧物と、比丘、比丘尼に施与された類の、現に出家が各自用いている所有物である現前僧物の二種。僧祇。僧伽物(そうぎゃもつ)。出家のものを盗み、みずから僧侶の真似をしてでたらめな事を言って人心を惑わせるのは大変な罪である。そのような者が臨終にあたり、罪を悔いて道心を発したならば、この仏さまが迎えに来るという。
平安時代に大いに人気が広まった法華経は、女性や悪人でも往生ができるということが書いてあるためで、たとえば源氏物語に出てくる女性たちが何かあるとすぐ出家したのも、一つには法華経といったものにすがり帰依するため、つまり仏道という逃げ道ができたからであった。法華経というと日蓮宗の専売特許のように世間では思っているが、法華経は仏教の根本的なお経の一つであり、観世音普門品第二十五偈などは他の宗派でも盛んに抜き読みされている。繰り返し「念彼観音力」という文句の出る部分。
女性を悪人と同列に置いていることから、これも古来よりいろいろ物議を醸すところではあるが、ここでは女性については暫く措くとして、悪人でも自動的に極楽往生できるわけではない。発心が必要。それがないと成仏はかなわない。
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