仏像圖彙9
【9】中品上生(ちゅうぼんじょうしょう)
[訳]
中品上生は五戒八戒及び諸々の戒を守り、五逆を造らず、西方に生まれんことを願う者。
阿弥陀は諸比丘と共に仏のために礼をなし極楽国に迎えとる。
[注]
五戒八戒は在家信者の守るべき戒め。(酒を呑むなとはコレマタ殺生な。書籍の間に煎餠布團を敷いているので八番目の「不得坐高廣大床戒(贅澤寝具は使わない)」は充分守っている)
五逆は諸説あり異動も有りますが冒してはならない五つの行為。母殺しは最大(父殺しは入っていないのが何と無く不自然。観経にも父王を殺し母をも殺そうとしたアジャセを諫める部分にも)お迎えの数も徐々に減っていくのも何だかなぁと(以上、冢堀庵談)
梵字の讀み
上品上生 キリーク 中生 サ 下生 サク
中品 アン マン バク
下品 ユ イー タラーク
ご存知とは思いますが木耳社の「梵字手帳」は入門編としては良いですね。
[解説]
続いて中品の仏さま。その上。
五戒は次のとおり。
不殺生 ふせっしょう 生き物を殺さない
不偸盗 ふちゅうとう 盗みをしない
不邪淫 ふじゃいん ふしだらな関係をしない
不妄語 ふもうご 嘘いつわりを言わない
不飲酒 ふいんしゅ 酒を飲んではならない
五戒は優婆塞戒(うばそくかい)、五常ともいう。
人は肉や魚、植物など、生き物を摂取しなければ生きていけない。このため、生きることは不殺生の戒めを破ることになる。このため、これについても古来より議論の対象となっており、食べた生き物は自分の血や肉となって生き続けるのだから、感謝しなければならないといったことで、生き物に感謝し大切にするといった教えが付加されている。もちろん、己の欲のため、あるいは理由もなく他人や生き物を殺すのは許されないことであり、一義的にはそういう意味である。
盗みは、他人の財物を奪うことはもちろんだが、他人の権利や尊厳を奪うこともまた盗みである。
「盗賊三種」といって、盗みの種類分けがある。
一、暴力によって盗む
二、知恵によって盗む
三、権力によって盗む
下へ行くほど悪質ということ。権力というのは、法律によって守られるだけに国民の監視と、厳正な捜査と司直による裁きが欠かせないが、近年、明らかに権力に対する捜査や裁きが緩く、これでは法治が崩壊し、道義が廃れて危険な状況になる。平安末期から鎌倉時代、いわゆる鎌倉新仏教が興った時代が圧制と混乱と退廃に覆われたものだった。
嘘いつわりと盗みは合わさっていることが多い。詐欺事件は典型的なものだし、権力者が己の栄達や利権のために国民に嘘をいって不正を働き、公金を搾取するなどとんでもないことである。政治家や官僚にも仏道に帰依している人は少なくないだろうに、自分ではこういったことをしなくとも、他の閣僚や議員がしている疑いがあれば、審議を拒否したり、国会を閉じてしまうことはせず、むしろ疑いを晴らすために率先して動くべきである。
先年、質問時間が余ったからといって、あろうことかその場で般若心経を読誦した与党議員がいた。経文を諳んじるぐらいだから在家のはしくれだろうが、般若心経を唱える前に、十善戒を唱えるはず。ここには五戒がすべて入っており、誓いの言葉となっている。野党を馬鹿にした態度とはいえ、よくもこういうことができるものであり、これもまた末法の世ならではのものと慄然たる思いがする。
八戒は、五戒に加えて、装身具・化粧をやめ歌舞を視聴しない、高く広い寝台に寝ない、昼食以後食事をしないこと。江戸時代初期まで、日本人は一日二食だった。僧侶はその後も基本的にはこれを守り、修行僧などは朝に托鉢をして回り、布施された食物を午前中に頂き、午後は食事をしないという戒律がある。宗派によっては厳格なところもあるようで(禅宗など)、夕方や夜はとてもお腹がすくという。玄奘三蔵の弟子として孫悟空、沙悟浄とともに天竺に経文を得る旅をした猪八戒の名がこの八戒に拠る。初め観音菩薩から悟能という名を頂いたが、のちに三蔵から八戒の名を授かった。本来の姓は朱だが、明代の皇帝が朱氏のため、これを避けて書物では同音の猪に改めた。西域より帰還の後、未来世に浄壇使者(じょうだんししゃ)となることを釈迦如来より約束された。三蔵は旃檀功徳仏、孫悟空は闘戦勝仏、沙悟浄は金身羅漢。
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