仏像圖彙1
冢堀庵主人訳註 大森博子編・解説
【1】傅大士 普成 普建
[訳]
梁朝の傅大士(ふだいし)
名は翕(きゅう)。字(あざな)は玄風(げんぷう)。また善慧大士(ぜんえだいし)と号し、また東陽大士(とうようだいし)と号す。十六歳にして劉氏を娶り二子に恵まれる。普成(ふじょう)・普建(ふけん)と謂うのが此れである。
[註]
大士 菩薩の漢訳。転じて仏道に志す人をいう。
[訳]
或る時、大士は自らの影を見て水にうつすと圓光(えんこう)や宝蓋(ほうがい)が見えた。普建はこれを指さし、普成はこれを見てほほ笑んだ。
[註]
普大士に仏相が備わっている事を示す。またそれを見る事の出来た二子にも同様に仏相がある事を表す。
[訳]
『佛祖統記』(ぶつそとうき)に據ると、烏傷県(現在の浙江省義烏市)の雙林寺に居住されたという。
[註]
佛祖統記 南宋の咸淳五年、僧志盤の撰。五十四巻。佛教史を扱う。
[訳]
一切經は目録多くして検索するのに苦労するので、書架を一本の柱で八面にしてくるくると回る様に拵え「輪蔵(りんぞう)」と名付けられた。
大建元年四月二十七日生地に戻って遷化(せんげ)された。我が国の欽明天皇三十年己丑の歳に当たる。
[解説]
はじめに。このたび、『仏像図彙(ぶつぞうずい)』の全訳を試みることになりました。全くの専門外、深く仏門に帰依しているわけでもない全くの素人として無謀なことですが、本書はむしろ素人にとって分かり易い図録であることから、多くの方にとっても有益ではないかと思い、浅学菲才を省みず取り組むことにしました。
とはいえ、各図に添えられた説明は仏教用語が多く、それと知らずに字のまま解釈をしてしまうことがあるかもしれない。それではせっかくの通釈が有害なものとなってしまう。そこで、[訳]と[註]についてはこの方面に造詣の深い冢堀庵主人先生に特にお願いすることとしました。
なお、先生の原稿は正字を使用されており、当初はそのまま使わせて頂こうと思ったものの、本註釈は一義的には一般の方を念頭に置いていることから、文字を平易なものに改め、更に適宜言葉を補うなどすることとしました。
さて、本書の解題ですが、『仏像図彙(ぶつぞうずい)』は全5巻。土佐秀信の画。元禄3年(1690年)の刊で、仏画集です。如来、菩薩から鬼神、暦神、習合神に至るまで、諸仏の図像を載録し、続いて仏具祭器を描いて、画師の参考としたものです。内容には誤りもあり、種々の批判を受け、寛政4年(1792年)に増補改訂され「増補諸宗 仏像図彙」として再版されました。今回底本としたのも、この改訂本です。
なお、次回からこの解説の項(大森博子担当)の文体は訳註同様に常体とさせていただきます。また、誤り等があれば適宜ご指摘いただけると幸甚です。
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