南留別志388
荻生徂徠著『南留別志』388
一 甲斐の国に、火ともしの翁を祠(まつ)りて、わか宮天神と名づく。日本武尊(やまとたける)のよみたまひし歌の下の句をつぎたれば、和歌の宮といふなるべし。国津神ならねば、天神といふなるべし。今はあやまりて、八幡と天神とをまつれり。今のわたりに、山梨岡の明神あり。社の前に綿をかさねたるやうなる石あり。甲斐がねといふ石なりと祝のいひし。甲斐の嶺といふ事も、かひがねといふをしらで、甲斐の国の根本なりと心得て附会したるなり。
[解説]日本武尊 が筑波を過ぎて甲斐国の酒折 (さかおり) の宮に着いたとき、「新治 (にひばり) 筑波を過ぎて幾夜か寝つる」と歌ったのに対し、火ともしの翁 (おきな) が「かがなべて夜には九夜 (ここのよ) 日には十日を」と答えたという。この故事が連歌の起こりとされている。
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