南留別志371
荻生徂徠著『南留別志』371
一 蝙蝠(こうもり)を「かはもり」といふは、圊(囗の中に青)もりなるべし。やもり、ゐもりの意なるべし。
[解説]圊は厠に同じ。母屋のそばに建てた側屋(かわや)の意、または、川に掛け渡して作った川屋の意。大小便を排泄する所。便所。後架。雪隠(せっちん)。はばかり。ちょうずば。東司(とうす)。徂徠は蝙蝠の訓よみ「かはもり」について、圊を守る「かはやもり(かわやもり)」のことではないかとする。徂徠が得意だった唐話(中国語)でも圊は便所のこと。徂徠は断定しているわけではなく、おそらくはこういうことであろうと推定している。なお、やもりは爬虫類でトカゲの仲間、家のそばに住み、時々窓や壁にはりついているのに対し、いもりは両生類でカエルの仲間、水辺に棲み、家には来ない。それぞれ「家を守る」「井戸を守る」が名前の由来。これと同じく、「こうもり」は便所を守るものということだが、便所に蝙蝠が棲むことは通常では考えられず、むしろ川に掛け渡して作った「川屋」のほうがまだ納得できる。下の絵は『和漢三才図会』の「蝙蝠(かはもり)」。
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