南留別志368
荻生徂徠著『南留別志』368
一 能は、元の雑劇を擬して作れるなり。元僧の来り教へたるなるべし。こればかりの事も、此国(このくに)の人のみづからつくり出だせるわざにてはあらじかし。
[語釈]
●元の雑劇 雑劇(ざつげき)とは、中国の古典的な演劇である戯曲形式の一つ。 主として北方系の曲調である北曲を用い、宋・元時代において隆盛した。 ただし「雑」とあるようにさまざまな時代や地域のものを含む。 一般には多く元雑劇(元人雑劇)のことを指す。
[解説]さらっとした文章ながら、なかなか手厳しい。能といえば日本の伝統文化、日本人の心を描いたものとして世界に誇り、世界が認めるものであるが、徂徠は能は中国の元の雑劇を擬したものであり、このようなものさえも此国(日本)の人が自分で創作することができない、と喝破している。神楽を見ると中国洋式が多くて納得できるが、能もまたオリジナルではないと言われてしまうと、身も蓋もなくなる。しかし、現実であればそれはまず認めて、どのように変えたのか、なにを創意工夫したのか、それこそがオリジナルであり、日本人を知る手がかりとなる。全否定はよくない。あくまで好き嫌いで言うなら別だが。
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