南留別志364
荻生徂徠著『南留別志』364
一 『胡琴教録』(こきんきょうろく)といふ物に、如木という詞あり。「じよぼく」とよめり。今の俗に「いたてんじん」などいへるごとき心にかよひて、装束をこはごはしくしき(着)なしたてるをいふなり。今の世に「せうぼくなき」といふ詞は、「じよぼくならぬ」といふ事なるべし。「小乏」などゝ文字をつくりてかくは、僻事(ひがごと)なるべし。『胡琴教録』には、太政入道などの事あり。鎌倉の比(ころ)の書なるべし。
[語釈]●胡琴教録 雅楽書。作者不詳。鎌倉前期の成立。
●太政入道 太政大臣であった人が、剃髪出家して仏門にはいった後の称。
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