南留別志356
荻生徂徠著『南留別志』356
一 りち(律)のしらべといふ事を、秋に用ふるは、五調の内、壱越(いちこつ)の土用にあたるをのぞきて、のこりの四調にては、秋にあたる平調のみ律にて、外は皆呂なるゆゑなりといふは、あやまりなり。りちのしらべといふは、十二律の調といふ事なり。一切のものゝね(音)の、秋は殊にすみわたる心にて、秋にもちふるなるべし。呂といふ詞を歌にもちひざればなり。
[解説]十二律とは中国,日本の音楽用語で、音楽に用いられる音を1オクターブの音域内で 12段階とする考え方。一つ一つの律には固有の名称 (律名) があり,それらを総称して十二律ということも多い。十二律は多くの場合、基準になる特定の音から始めて高さの順に低い律から高い律に並べて整理される。中国の各律の音高は,王朝によって異なるが,日本の場合は,壱越 (いちこつ) がほぼ洋楽のニ音に相当し、以下、順に半音ずつ高くなっていくので、律名は音名といってもさしつかえない。具体的には、中国では黄鐘(こうしょう)を基音とし、大呂(たいりょ)・太簇(たいそう)・夾鐘(きょうしょう)・姑洗(こせん)・仲呂(ちゅうりょ)・蕤賓(すいひん)・林鐘(りんしょう)・夷則(いそく)・南呂(なんりょ)・無射(ぶえき)・応鐘(おうしょう)。日本では壱越(いちこつ)を基音とし、断金(たんぎん)・平調(ひょうじょう)・勝絶(しょうせつ)・下無(しもむ)・双調(そうじょう)・鳧鐘(ふしょう)・黄鐘(おうしき)・鸞鏡(らんけい)・盤渉(ばんしき)・神仙(しんせん)・上無(かみむ)の十二調子。
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