南留別志350
荻生徂徠著『南留別志』350
一 太上皇の御所を仙洞(せんとう)といふ事は、藐姑射(はこや)の山といふより起る。本は嵯峨仁明の比ほひ(ころおい)、昆陽池、河陽院にて、文人をあつめ詩歌をたてまつらしめたまふ時に、姑射の山になずらへたるためしあるなるべし。
[語釈]
●藐姑射の山 藐姑射は中国で、仙人が住んでいるという想像上の山。本来は、「はるかなる姑射(こや)の山」の意。我が国では上皇の御所を祝っていう語として使われるようになった。仙洞は不老長寿の仙人の住居の意。仁明(にんみょう)天皇以後,天皇は在位中に譲位後の隠居所を指定し,これを後院(ごいん)と呼んだが,江戸時代中ごろから上皇不在の間の仙洞御所を後院と称した。今日の仙洞御所は京都御所の南東にあり,後水尾〜孝明天皇の仙洞とされたものであるが,その間たびたび焼失している。
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