南留別志345
荻生徂徠著『南留別志』345
一 女房といふ事、女ばかりにかぎり、房の字をつけたりと思へば、源平軍物語(げんぺいいくさものがたり)といふ草子には、男ばう女ばうといふ事あり。部なるにや。
[解説]女房という言葉について、元来は宮中に部屋を賜って住んだ身分の高い女官のことで、房は部屋の意。部屋を賜ったのは女官だけではないが、女性に限り房の字をつけたのはいかなることかと調べれば、源平軍物語という草子に「男ばう女ばう」という言葉が見えている。この「ばう」(房)は部屋のことであり、男房という言葉もあったのではないかとする。
「源平軍物語」は確認できる範囲で江戸前期(作者未詳)と江戸後期(〔一世〕南杣笑楚満人〔作〕、北尾政美〔画〕)の二種がある。これらは平安時代頃に使われていたとする根拠とならないのは言うまでもないが、現実にこういう用例があったかもしれないと徂徠は見る。図版は明暦二年刊「源平軍物語」。
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