南留別志316
荻生徂徠著『南留別志』316
一 勲位といふ事は、軍功によりて賜はる事なり。十二等ありて、勲一等は、正三位(しょうさんみ)の下、従三位(じゅさんみ)の上に列す。次第に配当して、勲十二等は、従八位の下に列す。衣服は、庶人に同じく黄袍(おうほう)をきる。勲位の次第は、軍功によりて、功田を賜はる為に設けたりと見ゆ。いかなる故にか、後世には、た(絶)えたるやうなり。
[語釈]
●勲位 国家的功労を表徴する栄誉のこと。8世紀に制定された『大宝令』にその定めがあり,栄誉の位階は,文位と勲位に分れて,勲位は主として軍人に与えられた。勲位は一等から十二等まであって,文位の正三位から従八位までにそれぞれ相当するように定められ,古代,中世においては王朝貴族が地方豪族に対する身分的優位を保持する意味をもっていた。勲位の一等に及んでなお功績があれば,その父子に,五位の文位を有するものに限っては賜田が,勲二等以上にはその子に特典が,それぞれ与えられた。1875年勲一等から八等までの勲位に,また 90年,功一級から七級までの功労に対する勲章制度ができ第2次世界大戦後,生存者叙勲は廃止されたが,1964年になって復活した。以上のように、また徂徠も説明しているように、勲位とは本来、軍功のある軍人に対して授与されたものであり、文官や庶民は対象外であった。
●黄袍 うえのきぬとも。奈良時代以降,束帯および衣冠着用のときの上着。両脇が閉じられ,すそに襴 (らん) という別布のついた縫腋の袍 (ほうえきのほう) と,襴がなく両脇が開いたままの闕腋の袍 (けってきのほう) とに分れ,前者はおもに文官用,後者は武官 (四位以下) 用。色によって身分を示す。
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