南留別志311
荻生徂徠著『南留別志』311
一 今の世に、六位以下をば、官位のやうに思はぬ事は、そのむかし、五位以上にばかり位田あり。六位以下にはなし。後に国介など世官になりたれば、其職田も世禄になりぬ。守は京都にありて、介にて国務を取り行ふゆゑ、国衙(こくが)にての雑用の料に定めたる、郡衙などは、介の心儘になりぬ。それより以下、掾(じょう)、目(さかん)、郡司等も、皆世官になりぬ。其職田は、みな世禄となりぬ。かゝる人の目より見れば、京官の六位は、望ましからぬ物なり。おのれと位階は、さのみかはらで、富はおとるべければ、おのづから、官位のやうに思はぬ事になりたるべし。
[解説]再び官人の位階と支給される禄について。官人は税を免除され、公卿ら上級官人には位階や官職に応じて、田や封戸(ふこ)が支給された。位に対して田が支給されるのが位田(いでん)。 官人の地位に対して田が支給されるのが職田(しきでん)。中央の高官ほど高い特権が認められていた。
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