南留別志310
荻生徂徠著『南留別志』310
一 古に古田を耕すを良家とす。是則(これすなわち)武士なり。正税を一町の田より一石一斗づゝ出だして、外に徭役をつとむ。私田を耕すものは奴婢(ぬひ)なり。耕す田の米は、残らず主人のものとなる。おのれは口分田(くぶんでん)といふ物を持ちて、是よりは税をいださぬなり。良家の口分田は二段づゝなり。現より税一斗一升出づるなり。奴婢の口分田はその三分一なり。現米一石六七斗なり。今の百姓は、此奴婢の類なり。
[語釈]
●奴婢 律令制における身分階級の一つ。良民と賤民がある中の後者に相当する。奴は男性、婢は女性を意味する。奴婢は、良賤法の他の3種と違い戸を成すことが許されず、主家に従属して生活した。父母のどちらかが奴婢ならば、その子も奴婢とされた。日本の律令制下における奴婢の割合は、全人口の10~20%前後だったと言われ、五色の賤の中では最も多かった。公奴婢は非常に少なくその分布も近畿地方に限られた。奴婢は主に耕作に従事した農業奴隷であった。最近、日本は史上奴隷がいない良い国と言う人がいるが、とんでもないことである。
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