南留別志293

荻生徂徠著『南留別志』293

一 或人(あるひと)の曰く、やしろに、社の字をかく事は、吾邦の神は、皆土地をしめたるゆゑなりといふ。


[解説]「神社」は神をまつってある社(やしろ)という意味だが、「社会」「会社」という語も「社」の字が含まれている。「やしろ」という和語は「や」(屋)と「しろ」(代)から成り、屋は建物、代は清めた土地のこと。神の降臨する場所という意味でもある。一方、「社」という漢字は、「土」は音符(ド=シャ)で、本来は農民が共同で祭る農耕地の神の意。やがて「つち」の意味として使われるようになったことから神や祭事などを表わす「示」がつけられた。「やしろ」という和語を「社」という字に当てた理由を「ある人」の説として挙げている。会社や社会は一定の範囲のものであることから「社」の字が使われている。

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