南留別志289

荻生徂徠著『南留別志』289

一 弓、鉄砲の頭(かしら)を物頭(ものがしら)といふを、学問だてする人の、者頭とかくは僻事(ひがごと)なり。物前、物わかれ、物ぎは、物ばやきなど、皆武といふ事を、物といふなり。物部(もののべ)より出でたる詞(ことば)なり。


[語釈]

●物頭 ここでは弓組・鉄砲組などの足軽の頭のこと。組頭。足軽頭。 

●学問だてする 学問があるところをひけらかす、物知り顔する。 

●僻事 間違い。 

●物前 いくさが始まる直前。 

●物わかれ 物別れ。両方の意見が合わず、相談などがまとまらずに別れること。 

●物際 物事の行われる間際。せとぎわ。 

●物ばやき 物早気。まだ態勢が整っていないのに動いていまうこと。はやけ。特に弓で狙いが定まらず、弓を十分に引ききっていないのに手を放して矢を放ってしまうこと。

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