南留別志279
荻生徂徠著『南留別志』279
一 熊野を蓬莱(ほうらい)といへるは、三の御山としふよりなるべし。熱田(あつた)をいへるは、明神、楊貴妃となり給へるといふ俗説によりてなるべし。
[解説]南紀熊野に蓬莱山という小さな丘がある。ここは秦の始皇帝の命を受けた徐福の一行が上陸したという伝説の地(徐福伝説は他にもある)。古代より神が降臨する霊山として尊敬されてきた。熊野川に面した古くからの祭祀の場で、南麓に阿須賀神社がある。一方、愛知の熱田神宮には楊貴妃の墓(の跡)とされる所がある。江戸中期の徂徠の頃にもこれらの伝説があったことがわかるが、中国の歴史についても該博な知識のある徂徠はもちろんあくまで俗説としている。
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