南留別志277
荻生徂徠著『南留別志』277
一 三郎(さんろ)が笛とは、玄宗皇帝の事なり。いかに誤りてか。牡笛の事にはしたりけん。
[語釈]
●三郎が笛 山路(さんろ)が笛。草刈り童(わらわ)に身をやつし山路と名乗った花人親王(のちの用明天皇)が、長者の娘玉世姫を思って吹いたという伝説の笛。のちに、牧童などの草刈り笛。また、恋人が思いをこめて吹く笛をもいう。浄瑠璃・五十年忌歌念仏(1707)上「柏木のまりさんろがふえ、古今其品かはれ共みなこれ恋路のよせがまち」。
●牡笛 牧笛の誤りであろう。
[解説]徂徠のいう玄宗皇帝の事とは、のちに安禄山(あんろくざん)の乱に引き裂かれた玄宗皇帝と楊貴妃が一本の笛を二人で吹く弄笛(ろうてき)の場面のことを指す。絵(下)は喜多川歌麿筆「実競色乃美名家見・玄宗皇帝楊貴妃」。
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